水に色がある。
 映した空や風景の色ではなく、水そのものに深い色がある。

 空気に香りと味がある。
 呼吸(いき)をするたびに,身体が満たされる芳醇な香りと味がある。
 ニュージーランドで暮らしていて、いつもそう感じる。
 
 水が豊富で美味しい・空気が澄んでいて美味しい。本当は当たり前のはずだけど、世界中で、それはとっても贅沢なこと。
 ニュージーランドは、水道水を安心して飲める数少ない国。オークランドの水道水は前に比べておいしくなくなったけど、ロトルアでは水道水で十分おいしい。
 この国の発電の70%が水力発電。その他は、火力、地熱、風力発電など。原子力は平和利用も含めて一切取り入れないのが「国是」だから、原子力発電は存在しない。

 そんなNZの中でも、ロトルアは特別に水に恵まれている。「湖水地方」と称するくらいの湖の多さ、NZ有数の火山・温泉地帯で、温泉資源も豊富だが、湧水ポイントがいくつもあって、通年10℃くらいの天然ミネラルウォーターが大量にこんこんと湧き出る泉があちこちにある。 
ハムラナ・スプリングス
 ロトルアの住宅では、メーター計りの水道代は無い。新規開発の住宅地はメーターでの水道代があるそうだけど、ほとんどの住宅地では、固定の「水道設備使用費」が Rates という固定資産税+住民サービス税に含まれているだけ。レンタルの家だと、大家さんが払っているので、借りて住む人には水道代はまったくタダになる。
 旱天が続く夏は、うちの場合、2〜3日に一度は庭の草木や芝生に水まきする。庭全体で1時間くらいはかかる。そんなとき、メーター計算の水道代だったら、恐ろしくてこんな水まきできないな〜とよく思う。
  “湯水のように使う”とは、ジャンジャカ使うこと。
 水は、何も考えることなく,ザーザー使える。なんて、ぜいたくなこと。

 私の生まれた街は長崎県の島原市で、雲仙岳の麓にある。ここは湧き水の町。町中に数百年の歴史を持つ水路があり、清水が流れている。
 父の転勤で3才の時から長崎市で暮らすことになった。坂の町長崎は、近隣の郡部から水を引くようになるまで慢性的な水不足の土地柄で、子どもの時は、夏になる度に給水車の水をバケツでもらいに行った記憶がある。だから、水道の蛇口はいつも小まめに閉めるクセがついていた。
 時おり島原の親戚の家に行くと、湧き水がジャージャー流れっ放しになっていて、蛇口を閉めようとして叱られた。「湧き水は流し続けないといけないのだ」と。
 驚愕した。湧き出て流れ行くものは、せき止めてはいけない、その摂理に。

 そんな湧き水を使って暮らせる場所は限られている。日本での生活のほとんどを過ごした長崎市は上・下水道料金が高かったこともあって、普通の生活では「節水が大事!」というのが身にしみついているつもりだった。
 NZライフで、それが解き放たれてしまった。
 緊張感なく、水がジャンジャカ使える! 
タラウェラ川
 でも、お湯は別問題。
 NZライフでは、お湯は、ものすごく注意深く使う。なぜ?

 いくら水が豊富でも、お湯にするには、電気やガスの力を借りないといけない。
 ほとんどのニュージーランド住宅の給湯システムは電気給湯で、シリンダー(給湯器)に一旦湧かした湯を溜めて使う方式になっている。バスタブ1杯にお湯をはると、シリンダーがほぼ空になって、家中のお湯がしばらく使えなくなる。だから、バスタブがあっても、普段の生活ではシャワーのみ。それも、ごく短時間。
 しばらく前のTVの省エネ・キャンペーンのCMで、こんなのがあった。パパ・ママ、ティーンエイジの子ども2人の4人家族。それぞれが、こんな点で省エネを心がけるよ、と宣言し合う。ママが「私はシャワーを5分にするわ」「じゃあ、ボクは4分にしよう」とパパ。嘘でしょー!? 日本人には信じられないけど、これは政府関連機関提供の大マジ・啓発CM。
 
 お湯は“湯水のように”使えない……もう一つの理由。
 NZの電気代は高い。そして、一般住宅の電気代の30%が、給湯システム。だから、お湯の使用量、お湯の温度に注意深くなる。
 毎日シャンプーとか、シャワーを30分とか、使えないのだ。「NZでホームステイする日本人学生が、ホストから一番注意されるのは、シャワーの使い過ぎ」という話は、当然のなりゆき。

 移住前、私たちがNZに「里帰り」する際に、友人たち数人を誘って一緒にドライブ旅行することが何回もあった。7人/レンタカー2台で南島旅行中、ファミリー・ユニット(2ベッドルーム+キッチン・ラウンジのユニット)があるモーテルで泊まった時のこと。女性たち2人が1人ずつ先にバスルームを使った後に男性陣がシャワー。途中で悲鳴があがった。「お湯が出ないよ〜っ!?」
 女性たちは日本暮らしの延長で、それぞれしっかりシャンプーして、たっぷりお湯を使ったのだ。
 私はNZ事情はすでにわかっていたが、アコモデーション施設だからと思って、うっかり警告するのを忘れていた。そんな施設で、まさかお湯切れになるとは予想していなかった。でも、考えてみれば、各独立のユニット形式の建物は、普通の2ベッドルームの家の給湯システムと同じなわけで……シリンダーのサイズは普通の家より小さいかも。
フカ滝

 メイン・ガスがきているエリアも多いのに、やっぱりほとんどの家は給湯も調理も電気。「ガス給湯に変えたら、お湯の量を気にしなくていいよ」という人もいる。できればそうしたいと思って、移住前からNZのリンナイに問い合わせたりして調べたが、残念ながら、最終的に落ち着いた現在の家はメインガスが来ていないエリア。
 「LPガスのボトルをリースで取り付けてリフォームすると、ものすごくコストがかかるよ」と、ガス屋さんの忠告で、断念。キッチンの調理台だけは妥協できなくてガスにしたけど、BBQなどに使う9キロのミニ・ガスボトル1本で4ヶ月は保つとわかって、こちらはコストパフォーマンスに満足している。
  今の家のリフォームに際して、給湯は電気のままにすることにして、シリンダーを大きな容量で熱効率の良い新しい機種に変えた。上の階のバスルームと別に、下の階に2つ目のバスルームを新しく作り、そちらの給湯シリンダーも別に取り付け、ゲスト用、ホスト用と一応区別。さざんか亭では、普通の住宅ながら、ゲストのシャワーは3〜4人が1人20分ずつくらい使っても大丈夫。
 でも、一応システムを説明して、「できるだけ効率よくお湯を使ってください」とお願いする。こういうNZの事情を理解してもらって、省エネに関心を持ってもらう機会になれば……とも思って。
さざんか亭スパ
 NZでは、お湯はジャンジャカ使えない。
 日本人には、肩までたっぷり浸かるお風呂に入れないのは、辛い。 
 移住前に、「NZライフで絶対揃えておかないといけない物は?」と、2年くらいかけてつらつら考えて準備した必需品リスト。
 シャワーだけでは疲れが取れない! 
 ずっとずっと考えて、「お風呂として使えるスパ は、必需品」
 ジャクジー・スパは 、NZでは一般家庭用として販売されているが、日本人のように熱めのお湯に入る習慣のない西洋人向けだから、たいてい39℃くらいの設定。それでは,冬場は寒くてとてもお風呂として使えない。探して探して、42℃まで設定できる機種を見つけ、住む家を決めたその直後に購入した。
 「このスパがあるから、NZで生きていけてるな〜」ホントにそう思う。
 疲れを溜めず、風邪もこじらせず、おかげで、なんとか生きている。
 身体の芯までしっかり温まるジャクジーのお風呂。
 旅行している時に、こんなのが宿に欲しかったな……
 ゲストにも、いつでも好きな時に、ゆっくり浸かれるお風呂で疲れをとっていただきたい。
 さざんか亭のスパは、そんなお風呂。