週末になると、町のあちこちの家にオープンホームの看板が立つ。
 
 ニュージーランドで家を買おうと計画している時は、このオープンホームを利用して、多くの家を見て回るのがいい。買うつもりはなくても、いろんな家を見るのは楽しい。
 自分たちが住めるかな? 買えるかな? ……という実用的な視点でのオープンホーム巡りもあれば、とうてい購入できる価格ではない“高嶺の花”の家を見るチャンス、という場合もある。
 
 当面は購入する予定はないけど、将来のためにいろんな家を見ておこうかな、という場合は気楽で楽しい。でも、実際に買う家を決めるために見て回る時は、要チェック・ポイントも多く、考えなくちゃいけない事も多く、希望と現実の狭間で、けっこうストレスも溜まって来たりする。
カワハ・ポイントさざんか亭
 ニュージーランドの家の売買はイギリス式で、投資家でなくても普通の人たちにとって家が投資の対象になっている。掘り出し物や手頃な価格の家を買って、ちょいとリフォームしたりペンキを塗り直したりして見栄えよくし、値打ちを上げてまた売りに出す。 リフォームなどもせず、不動産市場の動きを見て、値段が上がるのを待って売ることもある。または、レンタルにして、家賃を副収入にする。老後の年金の足しにレンタルの家を持つ場合も多いらしい。
 そんなわけで、家の売り買い、住み替え・買い替えの動きが目まぐるしい。 

 1件のオープンホームの時間は30分間、物件担当の不動産エージェントが カギを開け、その家を見たい人は、氏名や連絡先(電話やeメールアドレスなど)を記入して、自由に見て回る。その間、住人は完全に家を空けて外出する。
 家を買いたい人には、これは良いシステムなのだが、この家を借りて住んでいる人にとっては、困るシステムでもある。家の持ち主(=ランドロード)が売りに出したいと思ったら、オープンホームやその他の時間帯に人が見に来るのを断る権利がないし、買い手がついた場合、新しいオーナーがやはり投資目的で賃貸にするなら、そのままテナントとして住める可能性があるが、新オーナーが自分たちが住むためのファミリーホームとして買ったのなら、借家人は家の明け渡し期限までに別の家を探して引っ越さないといけない。
 日本と違って、NZでの借家人の権利は全くなく立場はとても弱い。ランドロードの意向に振り回される。私たちが、まさにそうだった。
カワハ・ポイントさざんか亭からー夕日と紅葉
 現さざんか亭の家の購入に成功するまでに、ずいぶん紆余曲折があった私たちの道のり。
 最初に住んだロトエフ湖のほとりの家を購入契約成立寸前で取り下げて、ロトルア市内に移ることを決断。その後、長期レンタルの家に住みながら、できるだけ多くの家を見て回って、自分たちの求める条件に合う物件を探し続け、購入オファーも数回。その度にタイミングや条件が旨くかみ合わず、5回目のオファーにしてやっと入手したのがこの家。その間、5年間の間に、ロトルア中の家を賃貸・売り物件合わせて200件以上は見て回ったと思う。
 週末のオープンホームのスケジュールをチェックして、見たい物件が同じ時間帯に重なっている場合でも、ロトルア市内の端から端まで車を飛ばしたこともしばしばある。おかげでスピードカメラにひっかかったらしく、一度スピード違反を喰らった(苦笑)。 
ロトルア湖とモコイア(カワハ・ポイント)
 自分たちが住む家(ファミリーホーム)としての視点だけなら、もっと簡単に決まっていただろう。でも、B&Bとしてゲストに泊まってもらう家としても条件を満たし、しかも、ライブラリーにできるスペースも必要、小さなベジパッチ(家庭菜園)程度ではなく、ある程度の広さの野菜や果樹を植える広さの土地も欲しい……。
 日本人ゲストは宿の回りを散歩するのが好きなので、周囲が静かな落ち着いた環境で、散歩に適した場所があること、レンタカー旅行でないゲストにとっては市内路線バスのルートに近いことも必須条件。
 12月〜1月は和太鼓練習会場のRAVE(カルチャーセンターのような所)のスタジオが特別イベントのために使えないので、自宅で練習となる。数人での太鼓練習の音でも大丈夫なくらい、近所と接近していないこと。つまり、やはりある程度の広さの土地で、プライベート感たっぷりの場所。
 ロトルアに住む以上は、湖に近いか、湖が見える所。
 しかも予算は限られている……となると、適当な物件はそう簡単にはないのだった。
  
 オープンホームを見に行くことで、普段は縁がなくて立ち寄らないエリアにも行くことになり、どのエリアはどんな雰囲気なのか、ずいぶんリサーチになった。意外に魅力あるスポットがあったり、 人気あるサバーブでも自分たちにはそれほど惹き付けられるものがなかったり……。今では、通りの名前でほとんどどの辺りかわかるようになった。
 ロトルアで家を買いたいという人があれば、物件を見るポイントや、エリア・環境その他の条件から、価格が適当かどうか、良い物件かどうか、相談に乗れるくらい家探しの達人になったという自信がある。
カワハ・ポイント散策路-ブラックスワン
 最近も若い友人カップルが、家の購入を考えた始めていると話してくれた。
 家も人も住む場所にも、出会いには、やはり直感や縁がある。だからこそ、できるだけ沢山の物件を見た方がいい。NZライフではせっかくオープンホームというシステムがあるのだから、活用しよう。仕事でオープンホームの時間帯に行けない場合は、担当エージェント に連絡すれば、別の日時に見られるように計らってくれる。遠慮せずに、どんどん見せてもらおう。テナントの立場の時は迷惑なこのシステムだが、家を買えそうな立場になったら、遠慮せずに行動しよう。

 NZでの持ち家購入は、 収入レベルに比して不動産相場が高いこと、住宅ローンの頭金が大きいこと、利子が高いこと、などなど……ハードルが高くて、若いカップルや中・低所得層のファミリーが家を持てないという社会問題が深刻化している。けれども、ロトルアの不動産価格はまあまあ落ち着いていて、探せばいい物件は必ず見つかる。

 自分たちが長い長い道のりの果てに、本当に納得できる家に出会えた。 
 だからこそ、家を持ちたいと頑張る友人たちを、心から応援したい。