“ DIY  It's our DNA" ……これはニュージーランドのDIYホームセンター「Mitre10」のコピー・フレーズ。まさに、KIWI(=ニュージーランド人)は、DIYが大好き。
 Mitre10やバニングスなどの大型DIYセンターは、モノ凄い規模で、工具、材料、家の各パーツ、ガーデニング関係などなど、何でもある。
 屋内・屋外のペンキぬりやちょっとした修理は、ほとんど自分でやる。庭の造成、ランドスケープ、剪定、伐採、植栽なども、たいてい自分でする。フェンスやデッキなども、自分たちで作ることも多い。ガレージは車を格納する機能以上に、ワークショップ(=作業場)の役目をしていて、工具類がズラリとならぶ“男の城”の様相を呈する。
 うちのガレージにも、工具類が増えた。ポールの姿が見えないなと思うと、ガレージでなんかゴソゴソやってる。休みの日になると、何か作りたくなるらしい。
チェーンソーを使うポール
 私たちも現在の「さざんか亭」となった家を購入してから、屋内を全面的にリフォームしたし、約800坪の敷地内のかなりの部分が繁り過ぎでジャングル状態だったのを、開墾、整備、植栽などして庭らしく整えてきた。
 手を入れれば、それだけ愛着も増す・・・と思うのだけど、KIWIたちはそうでもないらしく、家を買った時から、ペンキぬりしたりリファームしたりして価値を上げ、レンタルにするか売ることを考えているケースが多い。
 私たちは、そういう考え方はやっぱりできない。レンタルの家に住んでいた間、住み心地を良くするためにいろんな改良をしたくても、自分の持ち物ではないから思うようにはできず、どこかで妥協しながら不便さや都合の悪さをガマンしなければならなかった。自分の家となれば、思うように手を入れられる。一つ一つの作業が報われる充実感。
 長崎の家(「鳴滝亭  なるたきてい」と呼んでいた)を、自分が描いた間取り図に基づいて注文建築で建てた時、家に自分たちの暮らしを合わせるのではなく、自分たちのライフスタイルに合う家で暮らすということが、どんなに自由度をもたらすかを実感した。
 できれば、NZライフでも注文建築で家を建てられれば理想だが、NZでの新築はとてもコストが高く付く。古い家でも手入れをきちんとすれば、それなりに値打ちが付くので、50年60年くらい経った家でも十分ちゃんと売買の対象になる。100年も経った家は、かえってコロニアル調コテージとして大人気だったりする。
 私たちのさざんか亭も、たぶん築50年は経っているが、しっかりしている。このくらい年数の古い家の方が、リム材などの良い天然木を使っている。前の持ち主が“自然派”で、あまり構わない人たちだったので、購入時はかなりラフだったけど、壁も天井も塗り、カーペットも全面取り替え、バスルーム、トイレも完全に新しくした。玄関ドアも取り替え、全ての部屋に新しくレースカーテンとロール・ブラインドを取り付けた。 
ゲストルーム「しののめ」
 ポールも私も、アートやクラフト系の作業が好きで、ペンキ塗り大好き人間。
 長崎の鳴滝亭に住んでいたときから、ポールが棚を作って暖炉の上に取り付けたりしていたが、私はそれがイマイチ気に入ってなかったので、「作る前に相談してよね」と釘指すこともあった。「ちゃんとした工具さえあれば、ボクはけっこうハンディマンなんだ」と、彼はよく言ってたけど、私はふ〜ンと生返事。ポールの”作品”の印象はその程度だった。
 ニュージーランドに移住してから、確かにポールのハンディマンぶりは発揮されて、私も感心することが多くなった。「ちゃんとした工具さえあれば……」はホントだったんだね。

 バスルームやキッチンの配管、トイレを独立個室にするための壁やドアの取り付け、電気の配線、カーペットの張り替え、ガス調理台のガスボンベを外付けするためのガスパイプ工事などは、それぞれプロのワーカーさんに依頼したけど、それ以外の作業は全部ポールと私でDIY。壁のペンキ塗りの下地塗りなど、友達も一緒にワイワイ手伝ってくれた。ペンキ塗りパーティーは愉しい。
シダ文様の壁画
 壁の色は、ちょっとこだわりを持って、Dulux社のペイントのNZの地名が付いたシリーズから、色の好みだけでなく、何か自分たちにゆかりのある地名がついた色を選んだ。ゲストルーム3室と廊下の壁は、薄い明るめのグレー(ほとんどホワイトに近いが、しっとり落ち着いた色調)「ワイラケイ/ダブル」。リビング・ダイニング・キッチンは、ブルーグレーの「プホイ/ハーフ」。それも、リビングの方はマット、キッチンからの蒸気など湿度対応にダイニングとキッチンの方はグロス。オープンな空間なので、見た目には同じ色で統一。
 下の階の自分たちのベッドルームは、ベッドボードに当たる側の壁面に、濃いグレーパープル「レイク・プカキ」、その他の3面の壁は白。ランドリーとトイレの壁は、ポールがこの「レイク・プカキ」にバスルームの壁に使ったグロス・ホワイトを段階的に混ぜて、トーンの異なる藤色と、さらに淡いパステル・パープルを作った。
 トイレの壁に、私がフリーハンドでシダの文様を描いた。この小さな空間で壁に額縁の絵などを掛けると、窮屈な感じがするので、何かすっきりしたデザインで絵を描きたかった。ベッドルームに使ったグレーと、バスルームに使ったグロス・ホワイトの2色だけで、シダの葉とコル(シダの芽)を組み合わせて描いたら、地色のパープルと調和して、我ながら良い出来。 
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 屋外にも、さりげないけど、いたる所にDIYの足跡。
 私が「こういうのを作りたいな」とか、ポールに「作って欲しいな」ということもあり、ポールが密かに企てていることもあり……。
 庭のランドスケープやキッチンガーデンの構想は、ほとんど私のアイデアが形になっている。急斜面の土手をテラス状にしたり、土止めの壁を作ったり、クレマチスを絡めるパゴーラを建てたりなど、大物作業はポール。
 パゴーラの下に置くガーデンベンチがあるといいな〜、と言い続けていたら、「考えがある」と言ってたポールが、ある時、ドッシリ丈夫なベンチを作ってくれた。このエリアは雑草に埋もれていたのを、ウィードマットとバークを敷いて、プリムラ・ガーデンに変身。プラム、ナシ、リンゴ、サクランボ、キーウィーフルーツなどに囲まれたオーチャード・ガーデンでもある。花の季節はトゥイや山鳩、シルバーアイ(メジロ)などが寄ってくる。こうして新しい憩いの空間が誕生。

 キッチンガーデンを構想する時に、いつか絶対これが欲しい!…と思っていた、お昼寝サイズのスイング・チェア。ガーデニングの合間にひと息、すくすく育つ野菜たちや、青い空、白い雲、庭の樹木越しに見える湖を眺められる……ここは私のプチ・ヘブン。
 菜園の通路に当たる部分はバークを敷いたけど、スイングチェアの下は土台をしっかりさせたかったので、ウィードマットの上にペブルシートを敷き、玉石を敷き詰めて、できあがり。背面は、元の玄関ドア。枠をアウトドア用ペイントで、ビビッドなライムグリーンの縁取りをしたら、ちょっとレトロな感じの衝立になった。
キッチンガーデン&スイングチェア
 NZの男性も女性も、ガムブーツ(ゴム長靴)やワークブーツが似合う。丈夫で、どこか擦り切れてるトレーナーやTシャツ、短パンやズボンが、サマになってる。
 ワーカーさんに頼んだら人件費が高いから、コスト節約で断然DIYになるという面はあるけど、それより何より、DIYが当たり前の国なのだ。DIYが好きだからと言って、誰もが器用なわけではなく、好きと得意は必ずしも一致しない。日本人の目から見ると、かなりザーッとした仕事も多い。でも、KIWIたちは気にしない。
 日本人がDIY好きになったら、きっと丁寧にいろんな物を作るだろうな。日本人には、けれども、DIYを楽しむ時間と気持ちの余裕がない。日本には人間が多すぎるので、いろんな痒い所に手が届く仕事をしてくれる人が必ずいて、お金を出して人にしてもらうことが当たり前。
 器用さと細やかさがDNAの日本人、器用じゃなくても自分でやるのがDNAのKIWI。
 “DIY"って、別に日曜大工のことじゃない。”自分でやろうよ” “自分で作ろうよ” ってこと。
 物を作ることは、楽しみと共に自信を育てる。
 小さなことでも、DIYを始めよう。