2月中旬。ニュージーランドでは、夏の最後の月。先週2日程まとまった雨が降った後、また盛夏の陽気に戻った。…が、確かに秋の気配も混じり始めている。スイートコーンの収獲の頃、菜園の奥まった所に生えているジャカランダの花もそろそろ終わり。

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 紫色の花が房になって咲くジャカランダは、私の大好きな花木。

 「世界三大花木」(ホウオウボク、カエンボク、ジャカランダ)の一つ。
 ジャカランダは「紫雲木(シウンボク)」や「桐擬き(キリモドキ)」の別名もある。紫雲木とは、その姿にかなって奇麗な名前。桐擬きも紫の花が桐に似ていることから。私の名字が「片桐」で家紋が五三の桐なので、桐も大好きな花木。日本にいた頃、新緑に混じって咲く桐の花を見ると、心躍ったものだ。

ホウオウボク 
カエンボク
桐の花と五三の桐

 私がジャカランダが大好きなのは、花の色や木の姿の他に特別な思い出があるからかもしれない。
 ポールと出会ってニュージーランドに「里帰り」するようになった最初の頃、ノースランドのベイ・オブ・アイランズ にドライブ旅行に行った折り、ケリケリで立ち寄ったギャラリーに大きな大きなジャカランダの木があった。ちょうど満開で、明るい陽射しのもと、濃い紫の花は木全体を覆って、ギャラリー(キュートな家だった)の屋根までも覆うくらい。その光景が目に焼き付いた。
 ケリケリはその頃、私たちにとって住みたい街の候補リストのトップだった。ケリケリへの憧れと紫雲をまとったような大きな木のイメージが一体化した。
 「ジャカランダの木がある家に住みたいな」……とりとめも無い夢の一つになった。それは、20年くらい前のこと。


 南米原産のジャカランダは、温かい気候が好き。 ニュージーランドでも、ロトルアから車で1時間半くらいのファカタネでは、見事なジャカランダの木が何本もメインの通り沿いにある。ファカタネはネルソンと並んでNZの中で一番晴れの日が多い街。それに比べ、ロトルアは内陸部で標高も高く、北島の中ではタウポと共に最も冷涼な気候の土地。夏の最高気温28℃くらい、30℃にはめったにならない。冬の最低気温0℃~ ー2℃くらい。雪は降らないけど霜はけっこうすごい。人間にとってはさらさら気候で快適だけど、ジャカランダには向かない街。

 でも、ある時オープンホームで見に行った家にジャカランダが咲いていた。「ロトルアでも、大丈夫なんだ」……どこかで苗木を探せば、庭に植えて育つかな……“ジャカランダの咲く家に住む夢が漠然とよみがえる。

ジャカランダ(KIWI-RACCOさざんか亭)

 3年前に現在の「さざんか亭」となった家を購入。ロトルアの中でもちょっと高台。約800坪の敷地には大きな木も多く、前のオーナーさんが「自然派」で、要するに何も手入れもしない人たちだったので、敷地全体がジャングル状態。庭の整備と敷地の一番上の段を開墾して菜園に変える作業の成果で、だいぶスッキリ。

 遅い夏のある日、キッチンの窓から見える菜園の奥の木に紫の花が……あれはもしかして、ジャカランダ?  溢れるように木を覆うあのイメージではなく、緑の葉の中にパラパラと花房。でも、近づいてみたら間違いなくジャカランダの花。

 敷地の中でも、この部分は南西からの風(ということは冷たい風)が強く、 この木の幹も大きく傾いて、枝もだらしなく曲がりくねって徒長していた。長柄の剪定バサミが届く範囲で枝を切り戻したら、2年目は花房がいっぱい。あのジャカランダのイメージに近くなった。

 今年、3年目の夏。去年花期の後で伸びた枝をまたカットしたので、さらに樹勢がまとまった感じ。木の全体が風になびく方向に大きく傾いているので、バランスをとるために、いつか、ポールにはしごに上って届く限り、また剪定してもらおうと思っている。

ジャカランダ(KIWI-RACCOさざんか亭) 

 植物は 人に愛でられることを喜ぶ。人が近くに住むことで、元気づいて花がいっぱい咲くようにな気がする。

 全くの偶然で……"ジャカランダの咲く家に住む”夢が現実となった。


 この家は、多くの点で私たちの求める条件に合う物件だった。部屋数、レイアウト、ゲストルームと自分たちの部屋のエリア(階)が分かれていること、庭の広さ(菜園や果樹エリア、JJが走り回るスペース) 、陽当たり、眺め、市内バスのルートに近いこと……などなど。もちろん、価格も。 

 移住以来7年間、100件以上の家を見て回って、やっとやっとゲットした土地と家。資金が少ない私たちは、限られた条件の中で探しまわらないと家を購入することができなかった。

 パーフェクトではないけど、私たちにとってのドリームハウス。そして、ジャカランダの木は、私にとって画竜点睛。これも出会うべき“縁”だったのかもしれない。